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理事長通信

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話芸に、アンチクライマックスというのがあるそうです。2023年2月8日

 話芸に、アンチクライマックスというのがあるそうです。平坦な話が果てしなく続く。盛り上がりを欠き、情景描写や心理描写が淡々と続く、それでも話を聞く人を飽きさせず、話はいつしか終焉を迎える。さあそこで、聞く耳を持った人の心に何を残せるのか? いったい話者は何を言わんとしているのか? ではなく、なるほど、ここに導くための伏線がずっと敷かれていたという事か、と納得がある。そこが話芸のようです。

 と、自分でハードルを高くしておいて今週の話。
 はるか昔、小学生の頃より写真作家を目指して独学を続け、写真家はもちろん、それ以外のアーティストの影響を色濃く受けつつプロの写真家となった私は、ようやく広告写真で仕事ができるに至った時には、既にその仕事に飽きておりました。結構な情熱を注いで実現した自分だったはずなのですが。つまり本来の適性がそこになかったということです。
 バルセロナでピカソ美術館を訪れた際の話です。その美術館は、ピカソにとっては大先輩にあたる、スペイン人であり宮廷画家として名作を残したベラスケス、そのベラスケスが残した王女マルガリータの肖像画、なかでも王女の周りを取り囲む侍女たちが王女の出かける仕度を手伝い、仕度はまだかと扉の向こうで王女の出待ちをする国王(父)の姿を描いた名作があるのですが、ピカソはその絵を何百枚も模写しております。その数百枚の模写を展示した美術館なのです。私は圧倒されました。なによりその量に。そして学びました。天才とは量を産み出すことのできる人であると。ですから寡作の天才という言葉は的を射ていないと私は考えています。フェルメールとかね。名のある作家と並べで考察するのも噴飯ものですが、私が才能欠如を自覚したのはこの点でした。

 さて、本題。最近また写真のレタッチについて勉強をし直そうと思い、書架を眺めたところ、最新の参考書に学び直す必要性を感じ、数冊をアマゾンから取り寄せることにしました。適切そうなものをポチり、届いた本を在庫とともに床に平置きにし、帰宅後に目当ての本を手に取ろうと思ったのですが、あれ、ない。見当たらない。どこに置いたろうか? 階段に置いたまま出勤した? 歯磨きをしながらバスルームに置いた? と、探したのですが、目当ての本、表紙に「2023対応」の表示が目立つ本が見当たらないのです。目当ての本が見つからないのでしかたなく、それ以外の本を順に手に取り読み始めました。従前の学びに上書きして学ぶ機会を得て、それ以外の本からも学び直すことができました。新たな本は必要なかったかと思えるほど充実した学びも得ました。
 そして数冊に目を通したのちに手に取った本の表紙に目が留まりました。そこには本のタイトルやサブタイトルの下の方に小さく「2023対応」の文字があったのです。なんだ、この本じゃないか、ずっと探していたのは。私の思い込みで、その目安としていた「2023対応」は冒頭ではなくずっと下の方に小さく書かれていたのでした。私はこの文字だけを頼りに探していたので、本のタイトルや内容に目を留めず、最初に記憶した小さな情報だけを頼りに探し物を手繰っていたばかりに、本体を見失っていた、というわけです。

 この話がどこにつながるかと申しますと、私が話を置き換えるのは、「第一志望校」のことです。実は、探し求めていたものに辿り着いた時、それが最初に感じていた、本当にわが家とわが子にとって必要なものだったのか、検証のし直しは必要ではないですか?と。初見の情報を鵜呑みにしたままになっていませんか? 自分の本心と向き合いなおす余裕はありますか? もしかしたら違うのではないか? 別にあるのではないか? いや、確信を持ってこちらではなくあちらではないか? などなど。謙虚さとは、むしろ人と向き合う事以上に、自分の本心と向き合う時に発揮した方が良いものかもしれませんよ。

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信頼の指導47年 慶応幼稚舎・早実・慶応横浜初等部・小学校受験・中学受験・中等部受験に勝つ!

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