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理事長通信

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「多様性を認める」というスローガンに、私はずっともやもやした感覚を覚えていました。2023年8月23日

「多様性を認める」というスローガンに、私はずっともやもやした感覚を覚えていました。それが時代の変化であり、すなわち進化である、といった論調にも違和感がありました。
 はっきりとどこに不自然、もしくは不快感をもつのか確信が持てなかったのですが、ここ数日に起きた出来事でその形がはっきりと見えたように私は思いました。
 
 この原稿を書いているのは8月23日水曜日の朝です。今日の午後2時から甲子園球場で、高校野球の決勝戦が行われます。日本には野球というスポ-ツの中に、高校野球というジャンルがあり、そのカテゴリー内では選手全員が「丸刈りの坊主頭」という映像が一大定番として存在してきました。
 そのイメージを突き崩すサラサラヘアの男子たちが今年の高校野球の決勝戦を闘います。慶應義塾高校と仙台育英高校の生徒たちです。この件には結構多くの批判的な声が聞こえてきました。そんなことはどーでも宜しい、と私は思います。おまけに塾高野球部員は色白揃いです。「野球部員が日焼け止めをしているとは何事か!」の叱咤もかなり多くありますが、そこには科学的根拠がありました。日焼けによる体力消耗と低下を防ぐ、という理由だったのです。美容のためにPF50をパフでパタパタしているのではないのです。
 いろいろと噛みつきたい人が増えている時代ですからね。それこそ、いちゃもんをつけたいだけの外野に、いちいち説明するのも面倒なことです。

 私は一瞬だけ映像を見たのですが、韓国の女性DJが、日本でのイベントで場内を盛り上げる最中に観客席の最前列に走って行き、興奮した男子数名がDJの胸に手を伸ばして触った。そしてイベント終了後にDJと主催者がハラスメントの被害を訴えて問題となったという事がありました。この映像を見ていない人が文章だけ追って考えると、もちろんDJは痴漢行為の犠牲者であり、加害者は許されざる者だと思います。
 しかし既に実名を名乗ってコメントを発信している人の中には、DJや主催者の防御不備を指摘している人もいます。つまり、危険を予測できる状況に自ら近づいていったDJや、警備やガードを怠った管理側の落ち度に言及しています。
 それに対し、被害者である立場の人を擁護せずに加害者の側に立って論陣を張るとはとんでもない、そういう人物も性加害者だ、といった反論が起きています。おまけに反日のことまで引っ張り出して収拾がつきません。あえて他人に自分の正義や価値観を認めさせようと働きかけるから混乱が生じるわけです。

 賛成であろうと反対であろうと、名乗って意見を発信することは勇気のいることであり、批判される覚悟も必要です。どの立場に立つかによって、客観的な事実ですら事実でなくなります。それぞれの人の言い分を聞くにつれ、私の暗澹たる思いが核心に近づいてきました。
 社会全体が押し流されている時代の潮流は、人がもつ価値観の多様性を、受ける側が「認める」ではなく、主張する側が「認めさせる」ことになっているのかもしれません。つまり、「私の意見だけが絶対に正しい」「私の主張を呑め」「だれが何と言おうと私の言っていることだけが正義だ」「私以外の意見も主張も主義も認めない」「私だけがこの世の真実だ」とあらゆる立場の人が声を荒らげても良い時代になってしまった、ということかもしれませんね。
 それはTwitterから始まった個人のつぶやきが、自らの絶対性を社会に向けて咆哮する社会の始まりだったのかもしれません。

 私は本当の多様性を認める社会とは、「個人が大切にしている思いや価値観をそれぞれが大事にすること」「心に秘めていることならば、他人がそれを脅かさないこと」「個人の価値観を他人が批判しないこと。もちろん犯罪はダメですが」ということじゃないかなと思います。書き上げてすぐにアップした内容ですから、この通信にも噛みつく人もいるかもしれません。それも覚悟です。南無妙法蓮華経…

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