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理事長通信

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個人主義とは、個人の権利や主体性を認める代わりに、何事も自己が責任を持つ、という事と一体です。2023年8月30日

 個人主義とは、個人の権利や主体性を認める代わりに、何事も自己が責任を持つ、という事と一体です。一方で一億総幼児主義は、なんでもかんでも人に頼りがちで、自分で考え判断するという責任を放棄しているように思います。それは責任を放棄するだけでなく、自らの自由をも放棄しているように私は感じるのです。
 たとえば羽田空港はもとより空港アナウンスはやかましいです。「日本航空からお知らせします。日本航空JAL005便はただいま搭乗の最終案内をいたします。まもなく出発となります。ご搭乗のお客様は至急、搭乗口までおいでください」…。
 電車に乗っていても「次は品川駅です。なんとか線、かんとか線、東海道新幹線、…線、……線、にお乗り換えの方、次は品川駅です。Next stop is Shinagawa.…」と音声アナウンスが流れた次に車掌の声で「次はぁ、品川、品川でございます。お乗り換えのお客さまはお忘れ物のないようにご注意ください。本日雨のため、傘をお忘れになるかたが増えております。次はぁ、品川でございます」って、うるさーい! 電車が走っている最中、アナウンスが鳴りっぱなし! 「私は幼児じゃないです」とこちらが車内アナウンスをしたいところです。中川家にコントのネタを伝えたいぐらいです。

 親切で丁寧でそれがいい、という側面もあります。しかしなぜ過剰なまでの告知を行うかと言えば、「適切な告知をしなかったから駅を降りそこなったじゃないか」などという身勝手かつ幼児的な顧客の要求に対し、予防線を張るために違いないのです。と勝手に私は判断していますが。
 これ、国民感情でしょうか? 戦前の人はそんなことは言わなかったと思うのですが。戦後のベビーブームによって、教育ママと呼ばれる熱心なお母さんが、わが子に手をかけ過ぎる傾向が続いたことに原因の一端があると私は考えております。しかも時代的にはそのベビーブーマーの子どもたちが、親どころか祖父母となっている時代ですから。もう手をかけ過ぎた子育てをした結果「ひ弱で、外圧に弱くて。自立する気力もなくて、どうにもなりません」と家に引きこもる大人が全国で100万人に迫っている、というのも道理です。

 自立するとは、「他者に惑わされず、自分の信念を持ち、強く生き抜く力を身につけること、そのためには経済的に他者に頼ることのない生業を持ち身を立てること」でしょうか。人は人、我は我なりと達観できるのも信念を持てればこそです。

 国民が皆、「右へならえ精神」を良い意味で発揮したのは、一億総自粛マスク生活です。政府が緊急事態宣言を発令し、マスク着用と自宅待機を国民に求めただけで、一斉に国民が従いましたね。
 もしかしたらみなさん、3年前のことをお忘れかもしれませんが、あの時、ソメイヨシノが満開に日本中の空を彩った日々に、戸外を歩く人をほとんど見かけなかったことを。世界中の都市がロックダウンをし、軍まで出動して国民の外出を制限する国まであったにもかかわらず、日本ではほぼ何の混乱も起きずに自由が統制されたことを。
 それは日本人という国民が、順法精神が高いというだけではないと思います。緊急事態宣言下で外出などしようものならば、ご近所の目がうるさいから後ろ指を指されることのないように我慢を自らに強いる、マスク着用も同じ、という精神構造のなせる業だったのではありませんか?

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