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　書き連ねているトラブル紀行④ですが、ほんの数日の旅行でも、長きに渡る受験生活でも、その際に起きるさまざまなトラブルは人生の縮図のようです。

　さて、なんとかJFKターミナル4に着き、白タクを後にして走って向かったのはデルタ空港のカウンターです。通常の乗継便でしたら、経由地で飛行機を降りるとその場で航空会社の係員が誘導してくれます。今回私は、直接の乗り継ぎ便でないため、一度スーツケースを取り上げ、別の航空会社に改めてチェックインをし直し、荷物タグと搭乗券を手に入れ、荷物をチェックインし、また出発ゲートをくぐり直すという手順を踏み直さないといけなかったのです。1時間半はゆうにかかったでしょう。出発ゲートをようやく抜け、指示された搭乗口はもっとも遠い37番です。

　そうこうして、やっとの思いで駆け込んだ37番搭乗口ですが、思いは届かず扉はすでに閉められ、空港職員もその場を離れた後でした。乗り継ぎに5時間の余裕を見たというのに、なんとマイアミ行きの飛行機に乗り遅れたのです。
　私は呆然と、離れゆく搭乗するはずだった飛行機を見送り、あと10分届かなかった悔しさに脱力しました。

　予約した飛行機に乗り遅れた！　そんなトンマな事態は人生初の経験です。いやなにごとも経験したのでなければ、人の失敗にも寄り添うことはできません。願書の出願日や、受験料の支払い期日に遅れたママの悔恨の涙にもつき合う私です。
　それにしても、先ほどの白タクの割増料金を吞んだのも、トラブル回避と安全確保のためであり、なにより飛行機に乗り遅れないために時間短縮のコストとして払ったつもりだったのに。

　5時間も乗り継ぎ時間の余裕をみて飛行機の予約を取ったのになぜ？　
　まずJALの到着が1時間遅延したこと、JFKで入国審査に2時間半も取られたこと、ターミナル１とターミナル４の距離が想定外に遠かったこと、白タクに一発かまされたこと、こちらにとっては国内線の乗り継ぎに過ぎないにも関わらず、ターミナル4は国際線と国内線との共有した出発口であり、煩雑な出国手続きを要する旅客と同様の手続きを求められ1時間半も消費したこと、直接の乗継でないため、係員の誘導を受けられなかったこと、などなど、です。こうなってくると、受験後に第一志望校に合格できなかった原因を探るような心理になってまいりますね。
　しかしながら、5，6名の空港係員に交渉して、デルタ航空の荷物預けで幾ばくか優遇して優先してもらえることに成功できたこと、ターミナル4で最も離れた37番搭乗口まで全力で走ったことなど、全力は尽くした上にこちらに落ち度はないことで気持ちを収める以外に諦めのつけようがありません。

　さて、逡巡する間もなく次にどうするかと策を生み出さなければなりません。なにしろ、大急ぎで預けた荷物はすでにマイアミに向けて旅立っていますから。今夜NYに留まりたくても着替えもない。アレー…
　空港職員を呼び止め尋ねると、先に進んだ右にトラブル対応ブースがあることを教えてもらい、その「困ったちゃんコーナー」に行きました。
　廊下に面した広いブースには係員が二人いて、結構にぎわっています。ということはトラブルもそれなりに多そうです。
　私の担当は、黒人の大きなおばさまで、金髪の短いパンチパーマが魅力的です。なにより対応が大らかであったかい。これは気分的に救われますね。
「あらぁ、乗り遅れちゃったのね。ちょっと待ってね」と言って手元のキーボードを叩き、「次のデルタのマイアミ便は20時だわねぇ。残念料金はお一人さま75ドルだけれど、これでいいかしら？　もう一度出発手続きをする必要はないから、ターミナル内でお食事でもしていらしたら」と。
　はぁ、そうします。と私はアウトレットモールほどもあるターミナル4の端から端まで散歩して回り、出発前のパイロットも食事をしていたので味にも定評があるのだろうと判断したエキゾチックな雰囲気のステーキハウスのテラスで、12オンス（340ｇ）のプライム・リブアイステーキをレアで、ブランデーペッパーコーンソースをかけて猛然と胃袋に流し込み、とりあえず生き抜くためのエネルギーを補充して備えました。
と、こうしてようやくマイアミのホテルに到着したのは、羽田空港を飛び立ってからなんと、26時間後のことでした（ブラジルか、ここは）。つづく