前回よりつづき 人の意見を聞きすぎると全体がダメになる、というお話です。2024年5月15日
前回よりつづき
人の意見を聞きすぎると全体がダメになる、というお話です。
以前マクドナルドが業績を非常に落として苦境に陥った原因の一つとして「顧客のニーズを聞きすぎた」ということがあったようです。
詳しい内容は失念しましたが、マクドナルドは業績アップを図り、顧客のニーズを的確につかむ目的で、来店する客に広範囲のアンケートを取ったことがありました。
そして過去を刷新し、現在の顧客が欲するメニューや、望ましいサービスの情報を積み上げ、商品開発部は鉢巻き態勢で新製品を売り出し、新進デザイナーを抜擢して店内の改装を行い、グランドオープニングにこぎつけたそうです。
しかし結果として、満を持して登場した新商品はさっぱり売れなかったし、提供した店内のサービスも受け入れられなかった、そうです。売れているのは相変わらず昔から人気商品であったビッグマックであり、馴染んだ店内の改装へは批判すらあったようです。つまり、顧客の要望は、実際に提供された際に必ずしも顧客が望んでいるものではなかった。客は店からアンケートを受けたので、画餅を描いてみただけだった、ということです。
前回の成田氏の発言がバッシングを受けて契約したCMが解約された話をしました。これもクレームをつけた人の真意など本当にあるのかなと首を傾げます。
出典を忘れましたが、以前あるシンクタンクが顧客クレームを詳細に分析した際、ある事柄で炎上し、寄せられたクレームを分析したところ、10万件を超えるネガティブコメントの中から、とりわけ強く発信するクレームについて追跡調査をしたところ、なんと発信者はたったの7名で、その7名が繰り返し繰り返し、何千という強い言いがかりを企業に発信していた、という結果が判明しました。
7名は明らかなクレーマーであり、それ以外のその企業の製品を買っていた顧客からは、企業が対応すべき深刻な要望や不満はほぼなかったのです。
確かその該当する商品は販売停止となったのですが、たった7名の、それもその商品を購入したこともない不徳の者の不適切な活動のせいで、何万人という顧客は馴染みの商品を購入する機会を絶たれた、ということです。もちろん企業もその分の損失をまともに被っています。これ、許される行為でしょうか?
企業としては、何かしらの不手際から消費者が不買運動を起こす、といったネガティブなサイクルに陥ることを回避したい一心で、まともな対応をとっていないことが多いように感じます。
企業としてその問題をどう考えるのか、それに対しどう回答するのかという理念が問われると思うのですが、それがオーナー企業であれば、オーナーの哲学に依り、厄介なクレームへの回答が支持を得られれば、むしろ禍を転じて福と為すことになるでしょう。実際には多くの企業のトップはオーナーではありませんから、現場の責任を上へ上へと上げたところで、「まあ火の出火元だけ消火すればいいか」となって、誰かが文字通り「臭い物には蓋」をして問題を遠ざけているのが現状のように思います。
「毅然」とか「気概」とか「豪胆」といった、男らしさの手本はどこに姿を消したのかと嘆息します。忖度してる場合じゃないと思います。これもコンプライアンスがうるさそうですね。1987年4月のパリで、二人で一晩語り明かした高倉健さん、令和6年はこんな時代です。