早実初等部の以前の校長先生から2024年10月9日
早実初等部の以前の校長先生からお聞きした言葉です。
「私が教員生活で最も苦心し、克服するのに時間がかかり手間取ったこと、それは『待つ』ということです。生徒の成長を待つ。子どもが意味を理解してできるようになる、そうなるまで待ち続ける、ということがもっとも苦心したところです」
深いですね。早実の校長先生がそうおっしゃるぐらいだから、当時まだ若輩であった私などが、人を待てずにイライラを募らせるということは当たり前のことだなと思ったものです。
自分が親になってみて初めて分かることのひとつに「自分には簡単にできることなのに、どうしてわが子はできないの?」という純粋な疑問があります。本当に不思議ですよね。待てば花開く才能が今、眠っているはずなのに。
このように親の資質が子に伝承されていない、と逼迫した現状にお嘆きの親御さんは多くないですか? 少なくとも、親の欠点や短所ばかりが子に引き継がれていることもないだろうに、と悩んでいる親御さんは多くないですか?
私はいつも感じているのですが、父母、祖父母、曾祖父母、そしてさらに先のご先祖の持っていた資質、特質、才能というのは(まあ欠点や短所も含めて)すべてわが子に引き継がれていると思います。DNAに、何百世代も前から受け継がれてきた資質、特質、才能が書き込まれているはずです。
ただし現生で、自分やわが子の表層に出てくる資質や才能で、どれが顕著に出現して来るかは不明です。内包し、含んではいるけれど顕在しない才能も多いと考えています。
「親の私には、ごく普通にできることなのに、なぜこの子は不得手なのか?」とお嘆きの親御さんのいかに多いことか。
ケンジ先生は「わが子の得意を伸ばすために、わが子の好きなことを深掘りして」と言うけれど、この子は一体なにが得意なのか?…と。
ここに私は突破口のヒントを提供します。「趣味と才能は隔世で出現する」です。得意なこと、好きなこと、才能を含めてです。
かく言う私もその一人です。私の父は劇作家でもあり、教員でもあり、起業家でもあり、その家系には「学ぶ」ことを生業とする人が多いです(果たしてどの程度私がその血筋を引き継いでいるかは不明ですが)。そこに父の父は、実に実に趣味人であったという系譜があり、私のDNAにもそれらはしっかりと書き込まれております。
たった三代先祖を遡るだけで私の8割方の資質が網羅されていることを自覚します。さらに母と母方の祖父母の因子が加わるだけで、相当に多彩な、自分の中に眠る潜在因子を意識することができます。
といったことを含め、わが子の長所がさっぱり見当たらない、というお父さま、お母さま、あなたの父上、母上はどのような方でしたか? どんなご趣味でしたか? 何を得意となさっていましたか? そこにわが子の長所を掘り起こす、なにか芽吹くものがありませんか? 古きを温ねて新しきを知れば以て師たるべし、なんですよ。