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理事長通信

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前回よりつづき2024年12月18日

 前回よりつづき
 ところで、わが子にしつけを教えるってどういうことでしょう? 私は極めてシンプルに考えています。それはですね、一言で言うと「人からかわいがってもらえるようなわが子に育てる」ということです。
 意外でしたか? つまりしつけとは「礼儀をわきまえ、かつ子どもらしい言動で周りの人に可愛がられる」ことや「スムーズに社会を泳いでいくルールが身につく」ように教え諭すことなんです。親も周囲の大人も責任を持って。

 公共の場で大声や奇声を上げて走り回るわが子に、注意もせず母親同士で話し込んだり、スマホいじりに夢中なったりする親は社会性が著しく低いと言えるでしょう。そういう子がかわいくてノビノビしていて気にならない、なんて思うのはその親だけで、周囲は迷惑なその子をかわいくもないしけじめもメリハリもないウルサイ子と思っています。おまけにそんな子育てをしている親のことを軽蔑の眼差しで睥睨しているんです。あーあ、DQNファミリーってヤだなあって。
 親の教育の程度が相応に低い、とばかりに批判するものじゃありません。私は昔から知っているのですが、親の学歴や経済力と子育てのクオリティの高さはまったくと言っていいほど比例しないのです。

 一例をあげます。私が小学生、たぶん2年生頃の話です。それこそ戦前からある、三畳長屋と言えるほど質素な造りの長屋が近所にもあったのですが、そこに住む野球仲間の友だちの家で、その後の私の生き方が影響される経験をしたことがあります。
 友だちのお父さんは、呑兵衛の大工だったようです。よくキャッチボールをして遊んでくれることは聞いていました。
 ある日のことです。私がたまたまその友だちの家にいた時、いきなり招集ラッパのような声が小さな家の中に響いたのです。
 それは、「お父ちゃんが仕事にお出かけだよっ」というお母さんの声でした。すると、今まで寝転んで漫画を見ていた友だちと弟が飛び起き、お母さんの横にさっと横一列に立ち並び、「行ってらっしゃい」と声を揃えて、玄関で地下足袋を履いていたお父さんに向かってお辞儀をしたのです。
 私も勢いに飲まれて即座にその場に座り直してしまいました。
「あいよ、行ってくるよ」と振り向いた笑顔のお父さんが引き戸をぴしゃりと閉めると、3人揃って肩の力が抜ける、といった塩梅です。
 私はこの光景を目の当たりにして、「この家には文化がある」と感動を覚えました。高尚な精神性がこのファミリーの中核にあることを、その場の雰囲気から私は感じ取ったのです。
 客観的に見て、決して経済的に恵まれた家庭ではなかったかもしれないし、教育の水準が高かったわけでもないと思います。それでもこの家には父母を敬う家風があり、感謝して日々を生きる日常を送っている、と私はシンプルな潔さに高潔な精神を感じ、彼とファミリーにものすごく敬意を抱きました。
 もちろんその時はそんなに深い意味を見出せたわけではなく、単純に、「お母さんかっこいいな」という感想が湧き、友だちに関しても「すげーな」とその態度に感服しただけですが。
 私は今でも、尊敬の眼差しで父を送る友だちの表情をはっきりと思い出せます。取り立てて目立った子でもなかったのですが、彼の家の家庭文化の高尚性に圧倒されたというわけです。つづく

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